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サリドマイド製剤(イソミンとプロバンM、そしてゾロ品)

 2016/08/16 日本の薬害・公害
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サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし
そして、上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
このページも詳細ページの一つです。(現在の詳細ページ数、20数ページ)

イソミンとプロバンM(そしてプロバンMB)

大日本製薬(株)は、1958年(昭和33)1月、睡眠・鎮静剤イソミンを発売した。そして、1960年8月には、合剤の「プロバンM」を胃腸薬として発売した。その内容は、抗コリン薬の臭化プロパンテリンに佐薬としてサリドマイドを配合したものであった。

  • イソミン     サリドマイド25mg錠、100mg/1.0g散剤(10倍散)
  • プロバンM    臭化プロパンテリン7.5mg+サリドマイド6mg(錠剤)
  • プロバンMB    臭化プロパンテリン+ブロバリン(錠剤)

大日本製薬(株)は、レンツ警告について厚生省と協議をしたその当日(1961年12月6日)、プロバンMの佐薬をサリドマイドからブロバリン(ブロムワレリル尿素)に切り替える検討を始めた。

プロバンMの提携先であるGDサール社から、レンツ警告(サリドマイド禍)のことでクレームが来ることを予想して、事前にサリドマイドを外す措置を取ったものと思われる。

大日本製薬(株)は、1961年12月11日(昭和36)、厚生省に対してプロバンMの製造販売許可事項の変更申請を提出、翌年7月7日からプロバンMBの販売を開始した。もちろん、その直前の5月には、プロバンM(及びイソミン)は出荷中止となっていた。

なお、この間の事情については、細かい日時について諸資料で異同がある。ただし、いしずえ1984(年表p.117)の「1960年12月28日 プロバンM製造許可事項変更申請」は年度の間違いであろう。

イソミンの効能・効果及び用法・用量(略記)

イソミンの効能・効果及び用法・用量(略記)は、以下のとおりである。

  • 効能・効果:不眠症、手術前の鎮静、不安・緊張状態の鎮静
  • 用法・用量:鎮静作用を目的とする場合、通常1回12.5㎎~25㎎を1日3回服用。催眠の目的には、 就寝前に50㎎~100㎎を頓用する。小児には、適宜減量して用いる。(川俣2010,p.449)

イソミン(サリドマイド)の睡眠薬としての特徴について、平沢(1965,p.45)は次のように書いている。

「毒性はたしかに低かった。(中略)サリドマイドでは、自殺が不可能といわれているぐらいだ。イソミンをのんだ場合、さめ心地も格別だった。ほかの睡眠薬のように、頭痛や吐き気を感じない。それに、泥のように眠りほうけることもない。自然の睡眠状態同様、声をかけるか、軽くゆさぶるかすれば、目をさます。その点でも理想的であった」。

木田(1982,p.138)は、イソミンとプロバンMについて、「イソミンは、不眠症、手術前および緊張不安状態の鎮静に効果があり、妊婦、小児にも安全無害であると、テレビ、新聞などを通じても広く宣伝された。プロバンMは、胃酸過多、胃炎、消化性潰瘍治療剤として市販された」とまとめている。

イソミン・プロバンMの販売価格

  • イソミン25mg錠(12錠150円、30錠300円)
  • イソミン10%散(25mg700円、100mg2,500円)
  • プロバンM(30錠550円、100錠1,430円)
    参考:はがき料金5円(昭和26年11月1日~41年6月30日)

イソミン散剤の価格について、川俣(2010,p.453)は、上記のように25mg700円(純品10%散剤)としている。栢森(1997,pp.10-11)の見開きページには、イソミンの製品説明書や広告などのコピー写真が載っている。その中に「イソミン散は1g中、本化合物0.1gを含有する10倍散である」と書かれている。ところが、同書本文(栢森1997,p.9)では、「(イソミンには)10mg/1.0g散剤があった」としている。これでは100倍散になってしまう。つまり広告写真の表示とは異なる。

錠剤の場合、1錠(25mg力価)10円程度である。散剤の場合、25mg(力価)700円では錠剤の価格とかけ離れているように思われるが、どの様な販売方法を取っていたのか私にはよく分からない。

コンテルガンやイソミンあるいはプロバンMの催奇形性の強さ

サリドマイドの催奇形性の強さを示す一例として、西ドイツでは、薬局で買い求めたコンテルガン(25mg錠)を1回2錠飲んだだけで発症したケースがあるという(柏森2013,p.17)。

日本でも、イソミン25mg錠を1回2錠その次に4錠と、1週間おきに2回服用(合計150mg)しただけで発症した実例(平沢1965,p.19)がある。この例では、日々の仕事に疲れて寝つきの悪かった妻が、夫の常備薬を服用したために障害児が生まれている。

同じく平沢(1965,p.204)によれば、「中森さんが知っている京都のサリドマイド児は、(中略)7人いる。その過半数の4人は、母親がプロバンMをのんだために、奇形児がうまれた」という。

プロバンM(胃腸薬)のサリドマイド含有量(6mg)はイソミン(睡眠薬、25mg)より少ないとはいえ、睡眠薬よりも服用する機会の多い胃腸薬による被害は大きかったのだろう。

ゾロ品の発売

当時の日本国内では、新薬に対してゾロ品(後発の真似薬)が次々と発売されるのが常であった。この時も同様で、販売許可されたサリドマイド製剤は、イソミン・プロバンMも含めて全部で16品目(15社)に上った。そしてその中で、実際に製品を発売したことが確実なのは、下記6社(7品目)である。

大日本製薬(イソミン・プロバンM)、富山化学工業(グルタノン)、エスエス製薬(新ニプロール)、小野薬品工業(ボンブレン)、ゼリア化工(サノドルミン)、セイセー薬品工業(新ナイトS)。(川俣2010,pp.452-453)

これら6社が、サリドマイド裁判和解後、販売量に応じた損害賠償金を支払った。この中で、川俣は、セイセー薬品工業を生盛化学としているが誤りであろう。なお、セイセー以外は、21世紀まで存続している製薬会社ばかりである。

製薬会社ごとの被害者数

日本国内におけるサリドマイドの販売量は、大日本製薬(株)のイソミンとプロバンMで90~95%以上を占めていたとされている。しかし、大日本製薬(株)の販売量はその一部が公表されているものの、その他各社の販売量についてはよく分からない。なお、大日本製薬(株)以外の製剤は、25mg錠又は一部50mg錠と10%散である。

川俣(2010,p.491)は、「製薬会社ごとの被害者数は、投薬証明が不明なケースもあり正確には分からなかったが、新ナイトS(セイセー薬品工業)が一人、ボンブレン(小野薬品工業)とサノドルミン(ゼリア化工)の両方を飲んだ被害者が一人確認できるので、309人中少なくとも二人は大日本製薬以外の製品による被害者だ」としている。

サリドマイド訴訟では、大日本製薬(株)は、東京をはじめとする全国の8地裁全てで被告となった。同社以外で被告になったのは、セイセー薬品工業(東京地裁)のみである。

ゾロ品からジェネリック薬品へ

現在では、医療用医薬品は、新薬(先発医薬品)とジェネリック医薬品(後発医薬品)に分けて考えられている。ジェネリック医薬品は、特許期間が過ぎた新薬と同じ有効成分を使い、国の厳しい基準に基づいて製造・販売されている。開発費があまりかからないので価格は割安となり、国の医療費抑制の柱として厚生労働省でも後発品の使用を推奨している。

私は保険薬局の薬剤師として日々患者さんに接している。その中で、特に鎮痛剤(内服薬や貼り薬)について、先発の方が良いという患者さんの声を聞くことがある。後発品の生物学的同等性は保証されているはずである。それでもなお、製剤的な完成度において、後発品が先発品に及ばない面があるのだろうか。その他、ジェネリック医薬品には、多品目を取り扱うことによる欠品のリスク回避などの措置も求められている。

サリドマイド事件全般についてのまとめ

サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし
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