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サリドマイド訴訟(因果関係・責任論・損害)

 2016/08/19 日本の薬害・公害
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サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし
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このページも詳細ページの一つです。(現在の詳細ページ数、20数ページ)

サリドマイド裁判の過程で問題となった三点

1971年2月18日(昭和46)、東京地裁で第1回口頭弁論が開かれ、直ちに証拠調べに入った。証人尋問が始まったのである。以来月平均2回弱のペースで、丸1日を全部使う証拠調べが行われた。

山田伸男(弁護士=サリドマイド訴訟原告弁護団)は、サリドマイド訴訟について、次のようにまとめている。(以下「」内、ジュリスト1973,No.548,山田pp.335-339から引用)

「サリドマイド訴訟の外形上の特色は、(中略)まず第一に、国を被告としていること、第二に、国あるいは公共的機関が、これまで一度としてサリドマイドと奇形発生という一般的因果関係を研究・調査しないばかりか公にも認めていないことにある。そのため、請求の原因は、「一般的因果関係」「個人別の因果関係」「責任論」「損害」から構成されている」。

なお、1971年中には、争点である「因果関係」と「責任論」の大半を原告側申請の証人及び鑑定人計8名でもってほぼ立証した。

因果関係(サリドマイド胎芽病の原因はサリドマイドに有る)

原告側は、以下によってサリドマイド仮説「サリドマイド胎芽病の原因はサリドマイドに有る」を主張した。

疫学研究によれば、サリドマイド胎芽病は、サリドマイドが販売された場所(国)と時間(期間)でのみ発生している。そして、サリドマイド児を生んだ母親とそうでない母親とをグループ分けした場合、二つのグループ間で、サリドマイドを服用した割合には統計学的に有意差がある。

サリドマイド胎芽病には、他の先天奇形と違った法則性(連続性)がある。つまり、各種動物実験(最終的にはアカゲザル)によって、サリドマイドを服用させた時期と障害の現れ方に一定のルールがあることが分かった。

ノバックとレンツによって、ヒトの場合でも、服用の時期つまり胎芽の発達段階に応じて、障害される場所が異なることが分かった。つまり、体内で胎児の耳や上肢・下肢などができていく過程のどの時期に服用したかによって、障害の場所と程度が異なることが分かった。すでに明らかになっているヒトの胎芽の発育順序法則に従っているのである。

その他、妊娠初期のサリドマイド服用以外、特に意味のある事項はなく、他の原因は見当たらない。

これに対して、被告側は「サリドマイドには催奇形性は認められない」(一般的因果関係)とし、また「妊娠出産は未知の分野が多く、遺伝、突然変異もあり、サリドマイド服用の結果、当該奇形が発生したとの確証はない」(個人別因果関係)と反論した。

責任論(催奇形性をめぐって)

被告側の主張は、「(当時の学問水準では)成人に安全と考えられていた薬が奇形を発生させることは想像すらできなかった」、したがって過失はないというものであった。

これに対して原告側は、時期を分けて(製造販売許可時点、販売後、そしてレンツ警告後)、不法行為に基づく責任根拠を主張した。

つまり、加害企業と国に対して、本質的には毒物である薬(特に未知の新医薬品)については、常に世界最高の学問水準に従った副作用テストを行う高度の注意義務があると主張した。

また、当該企業は、「催奇形性テストもせずに「妊産婦、子どもにも安全」と積極的に表示、宣伝、販売した以上、妊産婦がこれを服用したため生じた結果に対しては、厳格なる責任を負担すべきこと」を主張した。

企業責任における無過失責任主義につながる考え方である。無過失責任:損害の発生について行為者に故意や過失がない場合でも、行為者が損害賠償の責任を負うこと。(法テラス:www.houterasu.or.jp/houritsu_yougoshuu/yougo_mu/mu_1.html)

そして、「疑わしきは消費者の利益」とすべきであり、何か疑わしいと思ったら、その薬は直ちに中止すべきであると主張した。

なお上記引用文中に、「妊産婦がこれを服用したため生じた結果」とあるが、明らかに「妊婦」が服用した結果(サリドマイド児が生まれた)の間違いである。

損害

損害賠償金額は、他国よりも安いとされる自動車事故の損害賠償金額を基準に算定された。これに対して原告側は、人間の身体・生命はもっと尊重されるべきであると強く主張した。

東京地裁における口頭弁論終結

東京地裁における口頭弁論は、1971年2月から1973年12月まで54回開かれた。その間約3年で、証人尋問(原告側・被告側)はすべて終了した。最初の提訴(名古屋地裁)から、約10年が経過していた。

山田伸男(弁護士=サリドマイド訴訟原告弁護団)によれば、口頭弁論終結直前の各地裁の状況は次のとおりである。(ジュリスト1973,No.548,山田pp.335-339)

「(1973年)現在、第二次訴訟を含め、東京地裁に39家族、京都、名古屋、大阪、広島、福岡、岡山、岐阜の全国7地裁に24家族、合計8地裁に63家族、請求額総計約23億5,000万円の事件が係属している」。

因果関係・責任を認め、和解申し入れ

被告側は、1973年12月14日(昭和48)、「因果関係と責任を争うことをやめる」旨声明を発表した。つまり、サリドマイドによって障害が生じたという因果関係、及び法律上の責任があるということを認め、原告側に正式に和解の申し入れを行った。

その後約1年間の交渉の末、全国サリドマイド訴訟統一原告団と国及び大日本製薬(株)との間で和解確認書に調印した(1974年10月13日)。以後、東京地裁で和解が成立(10月26日)したのに続いて、東京以外の全国7地裁で11月20日までに順次和解が成立した(63家族)。

ところで、日本のサリドマイド裁判(民事訴訟)では、国及び大日本製薬(株)とセイセー薬品工業株式会社(東京地裁のみ)の2社が被告となった。しかしながら、和解確認書で調印したのは、被告側では国と大日本製薬(株)のみである。そこで同確認書には、「セイセー薬品工業株式会社に係る原告の請求については本確認書に準じて処理する」という一項が入っている。(セイセーは経営状態が非常に悪化していた)

さて、サリドマイド訴訟における和解確認書の特徴として、以下の点が評価されている。

賠償金額が相当大きく、その中で年金部分が物価スライド制になっていること。そして福祉項目の中では、薬に何か不都合があった場合、「まず一旦薬の販売を中止する、場合によっては回収する」というように政府の強制力を強めたことである。

サリドマイド事件全般についてのまとめ

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