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環境保全調査検討委員会(細見谷林道の拡幅舗装化をめぐって)

 2016/10/08 西中国山地(細見谷など)
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環境保全調査検討委員会は、既設・未舗装の十方山林道(細見谷林道)を拡幅舗装化することの是非をめぐる検討のため、緑資源機構によって2004年春(平成16)に設置された委員会です。

同機構は、その目的を「林道工事の実施に伴う影響の予測・評価及び保全措置を専門的、学術的な見地から検討を行うため」としています。

ところが、同検討委員会の中村慎吾座長は、検討委員会や意見聴取の会の席上で、「この委員会では林道の是非についての審議は任されていない」、「林道建設を前提とした検討委員会である」などと発言したため、環境NGOから抗議を受けています。

もちろん林野庁の見解では、「環境保全は困難と検討委員会が結論を出せば計画は中止」とされています。

注:「環境保全調査検討委員会」に関する各種やりとりは、書籍「細見谷と十方山林道」(2006年版)の中で全般にわたって記載されています。煩雑になることを避けるため、以下では該当ページの表記を省略した場合があります。

工事着手のゴーサイン出る(ただし付帯意見付き)

環境保全調査検討委員会(第9回)は、2005年11月28日(平成17)に緑資源機構の報告書(案)を承認しました。しかしながら、環境保全調査検討委員会は全員一致で結審したわけではありません。座長を含む委員5名のうち2名が付帯意見を提出しているのです。

そのうちの一人である波田善夫・岡山理科大学教授は、最終検討委員会に臨んで、委員会の調査精度やモニタリングなどに関する見解を示した文書を、各委員及び事務局に配布し声明を出そうとしました。ところが、座長による発言の許可が得られなかったそうです。そこで、資料を回収した上でやむなく口頭で発言をしました。その文書は、「細見谷と十方山林道」(2006年)波田p.7に収載されています。

なお、結審後の意見書提出が認められ、同委員も新たな文書を提出しました。そして、同意見書は評価調書の閲覧の際にも付属資料として縦覧されました。ところが、他日ある人が閲覧しようとしたところ、付属資料のコピーは拒否されたということです。あくまでも正式文書ではないという解釈なのでしょうか。

さて、平成18年度期中評価委員会(林野庁、後述)が、2006年8月18日(平成18)に結審しました。これら二つの委員会の結論に基いて、2006年11月21日(平成18)、二軒小屋~吉和西工事区間の吉和側及び二軒小屋側の拡幅部分の工事が着手されました。こうして、細見谷大規模林道工事がいよいよ始まることになったのです。

検討委員会の経緯

第1回目の委員会は、2004年6月4日(平成16)に開かれ、座長に中村慎吾・比婆科学教育振興会事務局長を選んでいます。そして、事務局(緑資源機構側)の提出した環境保全調査報告書(素案)について検討を開始しました。

当初委員会は、2004年8月末までに3回程度開催して結論(2005年度工事着工のGOサイン)を出す予定だったようです。しかし、委員会で異論が続出し、第2回目以降の開催は遅れ気味となりました。そして、第9回検討委員会(最終回)2005年11月28日(平成17)に至って、ようやく緑資源機構の報告書(案)を承認しました。

さて、初回委員会は非公開でしたが、第2回以降公開となっています。

第3回検討委員会終了後、一般から意見書提出を求める措置が取られ、合計32件の意見書が提出されました(提出期間2004年12月2日~12月22日)。2005年2月5日(平成17)には、意見聴取会が開かれ、一般市民にも陳述の機会が与えられました。

これに対して市民の側から、意見書(32件)の公開や意見聴取会の議事録公開を求める要望、あるいは、中村慎吾座長の議事運営方法等に対して抗議がなされ、緑資源機構との間で数度のやり取りが行われました。

第4回検討委員会(2005年2月28日)傍聴者から、同委員会議題に意見聴取(2月5日開催)が入っていないことに疑問を呈する公開質問状が提出されました。この件に関して、機構側の回答を不服として合計3度のやり取りが行われました。

第6回検討委員会傍聴人有志によって、「ツキノワグマについての公開要望書」(2005年6月4日付け)が提出されています。しかしながら、最終回(第9回)まで、この要望書については聞き入れられませんでした。

環境NGOの活躍

「森と水と土を考える会」は、十方山林道問題に初期のころから一貫して取り組んでいます。その成果として、”渓畔林部分は拡幅しない”という方針を再確認させ、また環境保全調査検討委員会の設置に影響力を与えたと言えます。同会では現在でも、自前で植物関係を中心に現地調査を続け、緑資源機構に対して情報提供・質問・要望を繰り返し行っています。

2005年には、特に”林道新設部分”について調査を行いました。そこには豊富な樹種の巨樹が林立しており、林床では貴重種(絶滅危惧種)が数多く見られました。渓畔林部分同様、ここもまた植生豊かな地域であることが分かってきたのです。林道の新設によって、これらの植物が大きなダメージを受けることは確実と思われます。

また、植物以外の大きな問題点として、十方山林道の”地盤の脆弱さ”があげられています。それにもかかわらず、緑資源機構ではきちんとした地質調査は行っていません。そして、環境保全検討委員会に地質の専門家は一人も加わっていません。

宮本隆實・古川耕三の両名は、自らの調査結果「細見谷地域十方山林道周辺の地質」(日本地質学会発表及び林野庁提出済)を踏まえて、道路改変への評価を行い、また後日、検討委員会に地質の専門家を加えることなどの要望を行いました。

両名の出した結論は、「現林道に新設、拡幅、舗装を行わず、地滑りなどの危険箇所に安全対策を施して利用することが、道路の安定性の確保及びコスト面から考えて最善である」というものでした。しかし、機構側は、〈地表地質調査については、本委員会の検討対象とはしていません〉としか回答していません。

結局、地質の専門家は、だれ一人として環境保全検討委員会に加わることはありませんでした。

環境保全フォローアップ調査計画

2006年10月5日(平成18)に、緑資源幹線林道大朝・鹿野線戸河内・吉和区間(二軒小屋・吉和西工事区間)環境保全フォローアップ調査計画が公表されました(緑資源機構広島地方建設部発)。調査の目的は次のとおりだそうです。

「環境保全フォローアップ調査は、事業の実施が環境に及ぼす影響を十分把握し、環境保全調査において予測された事項の検証等を行うとともに、自然環境の保全のための措置の効果等を確認し、その結果を踏まえ、必要に応じて適切な措置を講ずることにより、事業の実施が環境に及ぼす影響を最小限に抑えることを目的とする」。

“環境保全フォローアップ調査”なるものは、第7回検討委員会(2005年7月10日)で提唱されました。工事を行いながら、それと並行して工事の施工中、施工後の環境への影響調査を行うという説明でした。

しかしながら、環境保全調査検討委員会(付帯意見)や期中評価委員会(後述)は、事前の調査不足を厳しく指摘しています。工事前の基礎となるデータが不足しているならば、工事が環境に与える影響を計ろうにも正しい評価ができるはずはありません。つまり、さらなる事前調査データの蓄積が求められていることに変わりはないのです。

注:このページは、電子書籍『細見谷渓畔林と十方山林道』アマゾンKindle版(2017年3月6日)の一部です。

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