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「本多勝一」論

 2017/02/02 団塊の世代一代記
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2005/09/23(金)殿岡文献追加の上、細部にわたって訂正追加
2003/03/15(土)本多勝一氏略年譜
2003/03/09(日)初出

本多勝一氏について

本多勝一氏(元朝日新聞編集委員、現『週刊金曜日』編集委員)と言えば、元”朝日”の看板記者であり、1968年(昭和43年)には、ベトナムに関する報道が認められて “ボーン国際記者賞” を受賞している。彼に触発されてジャーナリストになった後輩も多いと聞く。なお、現在彼は朝日新聞社友でもある。

そのような彼に、記事捏造あるいは時代の変化に合わせた書き換え、そして経歴詐称の疑いまでもたれているという。ここで事の真偽を論ずる立場にはないが、以下の如く、彼が私にとって”気になる人物”の一人であるということに変わりはない。

学生時代、私は”朝日新聞”をとっていた。その朝日で、1967年(昭和42)に半年間にわたってベトナム・ルポ「戦争と民衆」(6部構成)が連載された。反響は非常に大きく、第5部「戦場の村」は後に単行本となっている。

この記事を書いたのが本多勝一(東京本社社会部)であり、コンビを組んだのは、「愛知大学山岳部薬師岳遭難事件」の時が初対面であった藤木高嶺(大阪本社写真部)である。

本多勝一氏は千葉大学薬学部卒である。実家が雑貨店をやっており、そこに薬局を併設するため薬学部に行けと父親に命令されたためという。薬剤師免許取得後、自分の希望に沿って京都大学に再入学する。遺伝学に興味を持っており、遺伝学教室のある(京大)農林生物学科に行くためだった。

本多勝一(ほんだ・かついち)

2003年3月15日追記
「本多勝一年譜」(下記、晩聲社版末尾資料)および
「本多勝一が朝日新聞に発表した主な新聞記事一覧」
(下記、山と渓谷社版末尾資料)
「体験的本多勝一論」(下記、日新報道版全文)を元にまとめると本多勝一氏の経歴は、次のようになる。

昭和6年(1931年)11月、長野県下伊那郡(信州伊那谷)生まれ
昭和29年(1954年)3月(22歳)、千葉大学薬学部卒業(薬剤師)
同年4月、京都大学教養部入学、山岳部に入部
昭和31年(1956年)4月、京都大学農林生物学科応用植物学教室(専門課程)
昭和33年(1958年)10月(26歳)、朝日新聞社入社
昭和38年(1963年)1月(31歳)、「愛知大学山岳部薬師岳遭難事件」(13人全員死亡)
同年5月~6月、カナダ・イニュイ取材(カナダ・エスキモー、51回連載)
昭和42年(1967年)(35歳)、南ベトナム取材(戦争と民衆、98回連載)
昭和43年(1968年)(36歳)、北ベトナム取材(北爆の下、19回連載は翌1969年1月)
昭和44年(1969年)3月(37歳)、ボーン国際記者賞受賞
平成3年(1991年)(59歳)、朝日新聞記者として最後の記事(定年前)を書く
注:本多氏のボーン国際記者賞受賞は、社団法人日本新聞協会HP(Pressnet) “過去の受賞者リスト” によれば、昭和43年(1968年)となっている。なお、 上記生年月日は戸籍上のもので、ほんとうの生年月日については本多自身がはっきりとしたことを述べていないようである。

本多勝一「冒険と日本人-冒険的な現象に対する日本人の社会的反応について-」の記載場所変遷などについて

さて、彼の著作の中に、「冒険と日本人」(実業之日本社)がある。冒頭には、同名の論文「冒険と日本人」(副題:冒険的な現象に対する日本人の社会的反応について)という一文が掲載されている。

その論文で彼は、「堀江謙一」の「太平洋ひとりぼっち」成功に対する日本の新聞の反響分析から書き始めている(1965年3月記)。

初出は、今西錦司博士還暦記念論文集第三巻「人間」(中央公論社、1966年)であり、副題の”冒険的な ~”は、同論文集では”Adventurousな~”となっており、論文名そのものとして使用されていたものである。

彼の著作を見れば、確かに今西を始めいわゆる京都学派の学者から多くを学んだようである。しかし、京都大学農林生物学科に学士入学した彼は、大学を卒業することなく朝日新聞社に入社したらしい。それにも関わらず京大卒と記した彼の著作があり、経歴詐称の疑いを持たれたことがあったようである。

ところで、私の手元にある「冒険と日本人」(実業之日本社)は、1978年3月20日発行(第二版第一刷)のものである。その”あとがき”によると、本書は最初、二見書房から1968年に刊行された。その時の構成は、第二版冒頭にも収載されている冒険に関する数編の論文やインタビュー等に加えて、冒険とはあまり関係のない文章が多く含まれていた。

二見書房版はその後絶版となり、1972年に実業之日本社から改めて初版本として刊行された。その時、冒険に関するものを5編加えた上に、その他の対談なども収録したため大部のものになった。そこで第二版では、他の書籍(雑文集)も含めて取捨・選択をした結果、純粋に冒険に関係のあるものだけを集めた単行本とした、ということである。

本多勝一氏は今までに多くの文章やインタビューをものにしてきている。著作も多い。その彼の著作では、取捨・選択、分解・吸収が頻繁に繰り返されているようである。彼自身、そうした機会に発表当時のものに多少手を加える場合もある、としている。

ただしこれに関しては、幾人かの人から、その過程で見過ごすことのできない論旨の変調、あるいは逆転がみられる場合があるという指摘がされている。特に、”カンボジア大虐殺” に関しては、彼は最初、”虐殺の事実”否定派だったのが肯定派に180度転向したのだという。

堀江謙一と石原慎太郎、本物のヨットマンはどっち

最後に、堀江謙一氏は私が最も尊敬する海洋冒険家の一人である。「冒険と日本人」には、何度もマスコミでたたかれてきた堀江を擁護する本多のインタビュー記事がいくつか載っている。

石原慎太郎(東京都知事)は、堀江謙一の単独無寄港世界一周(1974年)という偉業を完全否定した。小型ヨットであの日数では不可能だと言い切ったのである。どこかの島影に隠れていて頃合をみて姿を現した、というような表現をしていたはずである。本多はこのことを捉えて石原批判をしている。この点に関して言えば、私は本多勝一派である。

本多勝一ルポルタージュとは何であったか

殿岡昭郎著「体験的本多勝一論」日新報道(2003年)

(アマゾンレビュー、akimasa21、2005/9/23)

本多勝一氏(信州伊那谷生まれ)は、朝日新聞社に入社して北海道で新人時代を過ごした後、東京本社社会部に転任する。そこで、「愛知大学山岳部薬師岳遭難事件」に遭遇して大活躍、「極限の民族」3部作(カナダ・エスキモーなど)へと飛躍し、さらに、ベトナム報道「戦場の村」で遂にボーン国際記者賞を受賞するまでになる。

その後引き続いて、「中国の旅」を含めて、中国、ベトナム、カンボジアなどで共産圏の取材を数多く行った。本書は、本多勝一氏と著者(政治学者)が、本多著「ベトナムはどうなっているのか?」の中のルポをめぐって、長年にわたって争った裁判の全経過を示したものである。

争点となった本多ルポでは、僧尼12人の集団自殺が性的な関係を含んだスキャンダラスなものとして表現されているのに対して、本書の著者は、雑誌「諸君」(1981年、昭和56年5月号)誌上で、宗教弾圧に抗議した集団自殺であったとする反論を発表した。裁判は本多氏側の訴えによって、評論部分の引用の適否および本多氏批判が名誉毀損にあたるかどうかをめぐって争われた。

論文掲載から最高裁判決(1998年、平成10年7月17日)まで実に17年間にわたる争いであった。その間3度の判決があり、いずれも筆者側の完全勝利に終わっている。本書では、これら一連の裁判において、引用あるいは要約の適否、いわゆる”発表もの”に対する考え方、「編集権とは」などがどのように審理されたのか詳しく説明しており読み応えがある。

全体を通して、本書は”本多ルポルタージュとは何であったか”を考えるのに最適な本となっている。本多シンパ、反対派ともに必読。

参考資料

本多勝一著「冒険と日本人」実業之日本社、1978年(第二版第一刷)
岡崎洋三著「本多勝一の研究」晩聲社、1990年(初版第一刷)
岡崎洋三著「本多勝一の探検と冒険」山と渓谷社、2000年(初版第一刷)
殿岡昭郎著「体験的本多勝一論」日新報道、2003年(初版第一刷)
週刊プレイボーイ、1975年11月25日号、堀江の世界一周記録はインチキ?
本多勝一「カンボジア革命の一側面」、(1975年)8月19日執筆
潮1975年10月号にて発表後、ほぼ原文通り下記単行本に収載
貧困なる精神・第4集(すずさわ書店、1976年初版第1刷)
同書籍の第9刷(1990年)に至って、論文名変更(プノンペン陥落の一側面)および内容に書き換えあり、ただし、執筆日は初出原稿のままとなっている。

キーワード:
本多勝一、藤木高嶺(たかね)、
「カンボジア革命の一側面」書き換え
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